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博物館ロビーにある二宮尊徳が語る【コラムリレー第6回】

山本俊郎022-1

 

博物館ロビーには二宮尊徳が立っています。

 

利尻町内の仙法志小学校に建てられていた二宮尊徳が博物館にきたのは10年以上前のこと。あるとき、利尻町仙法志出身で札幌にいる方から仙法志小学校の校庭で二宮尊徳像の除幕式が行われている写真が寄贈されました。和服とモンペを白いエプロンで装い、御神酒や餅などの受け渡しをする婦人たちや神社宮司は鼻・口や頬の部分には大きな白いマスクをかけています。像の右には紙垂をつけた玉串が見えます。仙法志小学校児童がたくさん写っています。

 

二宮尊徳調査が始まりました。まず仙法志小学校沿革誌を開いてみると昭和17年9月13日に仙法志村愛国婦人会、国防婦人会が統合して大日本婦人会仙法志村支部がつくられたのを記念して二宮尊徳像を寄贈し、設立のため勤労奉仕し、10月12日に除幕式が行われたと書かれています。左手で本を、右手で背負子の肩紐を持ち、左足が前に出て、本を読みながら背中に薪を背負って歩いている二宮尊徳。これを同じ型の二宮尊徳像が島内2ヶ所にありました。廃校になった久連小学校敷地と本泊小学校敷地です。二ヶ所の二宮尊徳像の台座には「至誠報徳」とあります。久連小学校の碑文には「愛婦國婦統合記念 昭和十七年八月建立」と刻まれています。

 

さらに調べていくと、博物館所蔵の旧仙法志村行政資料の『婦人会 大日本婦人会仙法志村支部 昭和十七年』には二宮尊徳像の購入が綴られていました。「愛国婦人會及國防婦人會統合記念トシ児童教育上二宮尊徳像ヲ村内各校ニ同両婦人會ヨリ寄附相成事ト決定候処購入ノ都合モ有之候條左記條ケンに依ル見積書至急御送付相成度候也」として東京都下谷区仲御徒町4丁目36番地の日本硬化石美術工業所に注文されています。金額は像・台座・小樽までの運賃で202円となっています。旧仙法志村の仙法志小学校と久連小学校に建てられた二宮尊徳像と本泊小学校に建っている二宮尊徳像が同じ型など共通することがあります。利尻島内にある二宮尊徳は同じ契機で建てられた考えられます。

 

仙法志小学校児童が集まって尊厳に行われた除幕式の写真。薪を背負いながら本を読んで歩く尊徳が家・村を復興して興国安民を実現したことを児童に学んでほしいとの願いが込められたことと思われます。国家に献身・奉公する国民の育成のために尊徳を見習うべきとした運動が利尻島でも展開されたことが、博物館ロビーにある二宮尊徳と除幕式の写真が語っています。

 

<利尻町立博物館 西谷榮治>