【コラムリレー08「博物館~資料のウラ側」第33回】
小樽市総合博物館本館は旧手宮駅構内跡地に博物館が建設されました。そのため構内には「旧手宮鉄道施設」(重要文化財)や「北海道開通起点標」(JR北海道指定準鉄道記念物)、道内で活躍した鉄道車両が保存されています。そして、メインの建物である鉄道・科学・歴史館の鉄道展示は、明治期に活躍した「しづか号」と道産初の一等客車「い1号」が見学できるしづかホール、北海道や小樽の鉄道史を紹介する展示、日本遺産「炭鉄港」のガイダンス展示など「小樽の鉄道文化」の魅力を再発見してもらえる鉄道展示室があります。
ところが展示室の大部分は1996(平成8)年に開館した小樽交通記念館の建設時に製作したもので、大半は展示物に古さが見られるます。しかし、当時から引き継がれたままの展示でありながら、現在でも色あせることなく人気が続くコーナーを紹介します。

ずらりと並ぶ蒸気機関車の模型、これは道内の代表的な機関車を紹介する「北海道の蒸気機関車」コーナーです。機関車10両を同一スケール(縮尺1/45 Oゲージ相当)で車庫の中に古い順番で並び、ボタン操作により見たい車両を車庫から呼び出すことができます。
なお蒸気機関車の形式は300種類以上あり、北海道には1000両を超える機関車が所属していました。その中から10両の選別は大変だったと当時の担当者は話しています。
ボタンを押すと、機関車が出てきて転車台で停車、回転中に車両の説明が流れ、また戻っていくだけの単純な内容です。しかし、小型機関車から大型機関車までオーバーランさせることなく定位置に止められるのは比類のないシステムです。(原理は簡単です。ここでは説明は控えますが、もし知りたい方はお声がけください。)
来館者が少ない日でも、ここだけは人が集まる人気のコーナーです。人気の理由として考えられることは、模型は全て特注品で精巧に機関車を再現している点、模型の機関車が動くことで子供も楽しめること、車両が登場する時に各車両のイメージに合わせた音楽を流す演出といったことが興味を引くのではと推測しています。
実際にお客さんの様子を観察していると、こちらが意図していない部分に注目して見ていたり、突拍子もない感想を会話していたり、観覧者の反応がいろいろで面白いものです。特に子どもが多くいつまでも居続けています。
人気の展示コーナーではありますが、システムは完成した29年前から全く更新しておらず、いつ公開終了になってもおかしくない状態です。例えば、音源に使用している機器は未だにレーザーディスクプレーヤー(LD)を使用しています。補修部品の保存期限は過ぎていて、メーカーでは修理してくれません。故障すれば予備のLDと交換で対応していますが、予備機は残り数台です。また可動模型の摩耗が進み、摩耗は本物の機関車と同じで車軸のズレなどが発生すれば走行不能になります。特注品のため部品交換も特注になります。また動力のモーターは昨年生産中止になり入手が難しくなっており、現状維持が厳しくなっていく状況です。
古くなった鉄道展示室の更新のため、いろいろな展示を見て勉強していますが、最近のデジタル技術や展示手法の進歩は著しいと感じます。しかし、どんなに新しい手法を用いても展示は劣化するものです。もし、新しい展示室を作る機会があれば10年~20年先を見越し、いつまでも色褪せない展示を目指したいものです。
(小樽市総合博物館 佐藤 卓司)
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