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天に響け―陸前高田 奇跡のオルガンat 東京国立博物館 CDリリース

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昨年度末に東京国立博物館では、特別展「3.11大津波と文化財の再生」( 2015年1月14日(水) ~ 2015年3月15日(日))が開催されました。この特別展では被災した多くの資料のレスキュー活動、修復、再生作業が展示されました。

会期中に本館正面大階段では、津波で被災し、その後再生して音が出るようになったリードオルガンを展示し、オルガンでミニコンサートを開催されました。沢山の来館者の方々にその音色を楽しんでいただいたそうです。

陸前高田市立博物館で保管されていたこのリードオルガンは2011年3月11日の大津波で海水を被り、すっかり傷んでいましたが、幸い日本リードオルガン協会の皆さんの支援によって見事に再生されました。

リードオルガン 三省堂機械標本部製造 明治時代末期~大正時代初期・20世紀 岩手・陸前高田市立博物館蔵 三省堂機械標本部が明治末年からの限られた期間、海保オルガン社に委託して製造・販売していた吸気式オルガンです。陸前高田市における幼児教育の先駆者である村上斐(むらかみあや)氏が購入し、使用していたものです。

リードオルガン
三省堂機械標本部製造
明治時代末期~大正時代初期・20世紀
岩手・陸前高田市立博物館蔵
三省堂機械標本部が明治末年からの限られた期間、海保オルガン社に委託して製造・販売していた吸気式オルガンです。陸前高田市における幼児教育の先駆者である村上斐(むらかみあや)氏が購入し、使用していたものです。

演奏の前の練習として閉館後の夜間、誰もいない本館の大階段で弾くと、オルガンが発する波動は、大理石の壁、床、天井を揺るがし、そして反響し、まるでヨーロッパの古い教会の中でパイプオルガンが奏でられているような、荘厳さがあったとお聞きしました。また、日中には聞こえない、まさにナイトミュージアムの異音、環境音も臨場感を与えてくれました。

あまりの響きの良さに音楽プロダクション、関係学芸員の方々や修復に関わった有志、ボランティアの方々が、この音をCD化し、皆さんに聞いてもらえないだろうかいうことになったわけです。

東京国立博物館の了承のもと会期中の人のいない寒い夜中に、階段で収録を行ったそうです。そしてついに、全10曲を収めたCDの発売が9月1日と決まりました。収益の一部は被災文化財の保存修復に使っていただくために、寄付をすることになっております。

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CD内のパンフレットには、製作に参加してくださった中村由利子さん(ピアニスト、作曲家)、松井五郎さん(作詞家)、白鳥英美子さん(歌手)、紺野美沙子さん(女優)、野島健児さん(声優)さんなどのメッセージに交じって、東京国立博物館館長、陸前高田市立博物館長、東京国立博物館保存修復課長(当時)などのメッセージも入っています。何れの文章にも、被災した文化財の再生にかける思いが綴られています。

年々、東日本大震災のことが記憶から薄れて行く中で、今後何年も作業が続く、膨大な被災資料の保存修復・再生を忘れ去られないように、音楽を通して改めて社会に喚起を促すことを目的としております。そしてCDが少しでも修理費用の足しになればと思っております。

 

<北海道埋蔵文化財センター 田口 尚>