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コンブの展示標本(コラムリレー第3回)

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コンブの実物標本

 えりも町郷土資料館・水産の館の秘蔵品は、コンブの標本です。

 北海道は東西南北すべてが海ですが、それぞれの海域に異なる種類のコンブが生育しています。似ているコンブもあれば、まったく異なる形態をしているコンブなど22種類を展示しています。また、海外のコンブも12種類展示しています。

 これらの標本は、採集後10%ホルマリンで固定し、その後、グリセリンで水分を置換したものです。そのため、コンブなどの褐藻類の色素が抜けてしまい、黄色くなっていますが、腐ることはなく、コンブの形状を比較する標本には適しています。しかし、漁業者からは「こんなのコンブじゃない!」とよく叱られます。これらの標本はコンブ学者の川嶋昭二先生と道内各地の水産技術普及指導所と漁業者の方々のご尽力により集めることができました。

 展示室は「コンブコーナー」として、生物としてのコンブ、地域産業の要であるコンブ漁業について紹介しています。このコーナーに来るとえりものコンブの事がほぼ理解できるよう努めています。

 日高管内で採取されるミツイシコンブを地域()ごとに標本にしています。各浜それぞれ一等昆布になる最上級品を並べていますが、浜によって、その長さ、幅、厚みが異なります。コンブ産業には「浜格差」という言葉があります。同じ一等昆布でも、浜によって価格が異なるのです。それもそのはず、各浜によって生育するミツイシコンブの質が異なるからです。

 「コンブって長いんですね~」と来館者の方は感心されます。「襟裳岬に近づくにつれてミツイシコンブは細長くなり、製品になると日高昆布と呼ばれるようになります。」「コンブは浮き袋を持たないので、水面に向かって真っすぐに立つことはないです。

「コンブの根は岩にくっつく役割だけで仮根といいます。陸上の植物と違って根から養分を吸収するのではなく、海水中の成分を葉(葉体)から直接吸収しています。」「生のコンブからは出汁(だし)は出ません、一度乾燥させないと出汁は出ません。」「コンブのうまみ成分はグルタミン酸で、世界中で‘Umami‘が注目されています。多糖類のアルギン酸は腸の働きをよくするので、コンブは天然の健康食品ですよ。

 人の営みであるコンブ漁業と生物としてのコンブをどのように融合させ、よりコンブを身近な食品にしていただけるか、これからも展示の大きな課題です。(えりも町郷土資料館 中岡利泰)