Breaking News
Home » 博物館〜資料のウラ側 » 寄贈された資料たちー特別展をきっかけにー

寄贈された資料たちー特別展をきっかけにー

【コラムリレー08「博物館~資料のウラ側」第23回】

 みなさんも教科書などで目にしたことがあるかもしれない、喜多川歌麿の代表作「ポッピンを吹く娘」。2025年5月、東京国立博物館で開催された特別展の準備過程で、「婦女人相十品」よりも以前に作成された、「婦人相学十躰」と呼ばれるシリーズの「ポッピンを吹く娘」が発見され、特別展にて公開されたことが話題になりました。 このように企画展を開催することで、新たな資料が発見されることがあります。また、企画展の開催中、もしくは開催後には、企画展を見た来館者から、「家にこのような資料があるんだけど…」と連絡をもらい、資料を寄贈していただくこともあります。今回は、北海道博物館(以下、当館)の例に、企画展の開催を通じて収集した資料、寄贈の「ウラ側」をご紹介します。

鉄道をテーマにした特別展から

 2024年に開催した、第10回特別展「みんなの鉄道―がんばれ!地域の公共交通-」では、鉄道の歴史を中心に、北海道の公共交通をテーマとして取り上げました。北海道内各地の鉄道資料をお借りして、鉄道ファンをはじめ、多くの方に足を運んでいただきました。

写真1:特別展での展示風景

 特別展では、鉄道でのたのしみとして、当館で収蔵している道内各地で使用された駅弁掛紙の一部を展示しました。

写真2:樺太の駅弁掛紙(北海道博物館所蔵)

 こちらは寄贈された、樺太(からふと)の駅弁掛紙です(写真2)。「駅弁の掛紙がある」というお話をいただき、駅弁掛紙のほか、鉄道の時刻表や賞状の見本など、樺太に関する資料を200点ほど寄贈いただきました。本資料は、豊原駅前にあった越後屋の掛紙です。左上には、樺太神社の絵がありますが、越後屋の別の掛紙にも、樺太神社が描かれ、樺太・豊原の名所として紹介されています。

 特別展での展示資料や当館の収蔵資料は、戦後の掛紙が多いため、本資料のような戦前期、樺太の掛紙を寄贈いただいたことで、これまでの所蔵資料を補完するとともに、時代や地域にひろがりを持たせることができました。

講座に関連した資料も

写真3:樺太で使用されたバスの乗車券(北海道博物館所蔵)

 特別展関連行事として「日記や新聞にみる北海道と樺太の鉄道」を実施し、筆者は樺太の鉄道を担当しました。講座では、樺太の恵須取(えすとる)という町に焦点をあてました。この町は、鉱山と港を結ぶ軽便鉄道はありましたが、ほかの町につながる鉄道がない町で、町民が鉄道敷設に向けて運動を行っていたことを取り上げました。

 本資料は、乗合自動車の乗車券です(写真3)。この講座に参加していた方から寄贈されたもので、寄贈者の父が恵須取へ訪れた際に使用したものだそうです。乗車券に記載されている、恵須取、鵜城はともに西海岸北部に位置し、恵須取―鵜城間の移動は乗合自動車を使用したと思われます。鉄道だけでなく、乗合自動車や船舶を使って人々が移動していたことを、この乗車券からよりリアルに感じることができます。講座内容にリンクする資料であり、今後、樺太内での移動方法や旅行形態などの研究に活用できる資料であると考えています。

 以上、特別展の開催を通して寄贈いただいた資料を紹介してきました。博物館の企画展を起点に、資料を寄贈してもらうことは、企画展開催の意義を感じ、学芸員冥利に尽きます。

 また、今回紹介した資料はいずれも樺太関係資料で、ともに樺太にゆかりある方から寄贈されたものです。寄贈していただいた資料を保管していくとともに、樺太の記憶継承という役割も果たしていきたいと思います。

                             〈北海道博物館 学芸員 石子 智康〉