Breaking News
Home » 学芸員のお仕事 » 昆虫採集とマスク【コラムリレー07 第13回】

昆虫採集とマスク【コラムリレー07 第13回】

 帯広百年記念館が位置する帯広市の緑ヶ丘公園は、50.5ヘクタールの敷地があり、おびひろ動物園や道立帯広美術館、帯広市児童会館、野草園、テニスコート、パークゴルフ場などの施設を有し、園路も充実しています。また、人工の池や林、比較的人の手が加わっていいない林、段丘など、さまざまな環境を持つ公園です。今年の4月以降、新型コロナウイルスの感染拡大により、密にならない環境を求めて、例年より多くの方が公園を訪れています。また週末の各種イベントの減少に伴って、おそらくこれまで公園を利用したことがなかった方も訪れ、ジョギングや散歩、ピクニックなど、思い思いの時を過ごしている様子がうかがえます。

緑ヶ丘公園(帯広百年記念館2階より撮影)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

◼緑ヶ丘公園での昆虫採集

 私はこの緑ヶ丘公園をフィールドにして昆虫採集を行なっています。公園にどんな昆虫がいるのか、リストアップをすることを目的とした昆虫相調査のためです。最近、たくさんの方が公園を活用していることが大変嬉しく、そんなみなさんを驚かせることのないよう、できるだけ目立たないように、いつも注意を払いながら採集を行なっています。

 例えば、昆虫のトラップを仕掛ける際には、できるだけ公園を歩く方から見えない、園路から離れた場所を選び、自身はネームプレートを着用し、林の中から急に飛び出してびっくりさせないなど、ご迷惑にならないようにしています。

 また、何をしているのか、話しかけて来てくれる方へ説明しながら、博物館の活動も伝えるようにしています。4月から5月にかけて、開館以来、初めての長期臨時休館により、外部の方との接触がなくなってしまった際には、「休館時、どんな仕事をしているのか」など、公園を歩きながらお話することができ、「開館を楽しみにしいる」といった声を受け、昆虫採集をしながら、意欲と刺激をいただいていました。

◼昆虫採集とマスク

 ただ、補虫網、またはたたき網と棒を持ち、吸虫管を首から下げた姿は大変怪しく、さらに今シーズンはそれに加えてマスクを着用しているため、いつも以上に、不審に思われる方が多いかもしれません。散歩中の犬が「(この人、怪しい!)ワン!」とこちらを見て吠えたり、しっぽを垂れ下げて、怖がる姿が見受けられます。怪しいものではありませんと、飼い主さんに笑いかける表情も、マスク越しでは十分に伝わっていないかもしれません。

マスクをして昆虫採集

 チューブから息を吸い込むことで微細な昆虫を採集する「吸虫管」は、チューブを咥えたままだとマスクをつけることができないため、マスクの着脱を繰り返し行う必要があります。ふと、マスクに穴を開けると良いのだ!と思いつきますが、マスクはそういった使い方をしてはいけません。

(左から)たたき網、今シーズンお気に入りの棒、吸虫管、補虫網

◼良いことも!

 色々と不都合がある中、思いがけず良いこともあります。いつも顔に引っかかっていた蜘蛛の巣が、マスクによって直接顔に触れないということです。小さな虫が口に入ることがなく、枝や葉による傷つきや、おそらく日焼けも防がれていると思います。よく口に出してしまう独り言も、マスクによって他の方では聞こえづらくなっているかもしれません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 公園を利用するみなさんは、野外であってもマスクを着用しています。北海道も日中は気温・湿度が高い季節ですので、十分な距離が保たれるときには、マスクを外すなど熱中症対策を行いながら、公園での時間を楽しんでいただきたいと思っています。また、怪しい姿に見える昆虫採取者は、実は怪しくなく、真面目に調査に励んでいる者ですので、ご安心いただけると幸いです。

(帯広百年記念館 学芸員 伊藤彩子)