博物館には地域の自然や歴史についてより興味を持ってもらうための様々な工夫・仕掛けがありますが、今回は私が働いている士別市立博物館で使っている野鳥の鳴き声を聞いてもらう仕掛けの一つ“鳴き声タッチペン”を紹介したいと思います。
このペンは、野鳥写真シートに貼られたシールをペン先でタッチすると、その野鳥の鳴き声が再生されるという優れものです。シールが2次元バーコードになっており、ペンでそれを認識して、対応する音声データを呼び出すような仕組みになっています。
(元々は幼児の英語学習用に市販されているもののようです。充電式と乾電池タイプの2種類があります。2次元バーコードになっているドットシールが付属し、好きな場所に貼ることができます。)
野鳥や動物の音声が聞こえるペンは、図鑑とセットになって市販されているものもありますが、それでは既に搭載されている音声しか流すことができません。また、内容も全国版の図鑑なので、北海道や各地の地域性には対応していません。一方“鳴き声タッチペン”は、microSDカードにデータを移すだけなので、音声データがあれば自前で自由にカスタマイズすることができます。調査や観察会などで聞こえた鳴き声を録音しておけば、オリジナルの“鳴き声タッチペン”を作ることができます。
野鳥の鳴き声を聞いてもらう仕掛けでよくあるものとしては、ボタン式の再生装置があります。展示しているはく製や写真に対応するような形でボタンがあり、押すとその種類の鳴き声が再生されるというものです。ただしこれは装置が大掛かりになりやすく、費用や故障した際の修理を考えると、コストの面で導入の敷居が高く感じられます。その他には特定の場所を通過するとセンサーが感知して音が自動的に再生するような仕掛けもありますが、その時自分で聞きたい種類を選ぶことができません。一方で“鳴き声タッチペン”は、比較的安価(1~2万円程で、備品ではなく消耗品で購入できる範疇)で来館者が聞きたい鳴き声を自由に聞くことができます。
当館では写真シートにシールを貼って使っていますが、館内のキャプションや展示パネルに貼り、ペンを受付で貸し出すようにすれば、展示室内各スポットで音声を聞くことができます。また、搭載する音声も、野鳥や動物の鳴き声に限らず、その展示コーナーや資料に関する解説アナウンスの音声を使うこともできます。多館の事例としては、類似の音声機器を多言語解説にも活用しているところもあり、“多言語解説ペン”としても使うことができそうです。
難点としては、電池の消費が早いのか、長く使用すると頻繁充電が必要であるというのと、不特定多数の方に使ってもらうことを考えると、使用頻度によっては耐久性に若干の不安があります。
専門業者ではこういったものも含めて各種情報端末を扱っていると思いますが、それと比べると導入コストもわりと手ごろで、自前で自由にカスタマイズできるというのが、このペンの良いところです。皆さんももしよかったら使ってみてください。
<士別市立博物館 学芸員 本部哲矢>