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野外岩石調査記とハンマー・ルーペ【コラムリレー06第18回】

その辺に落ちている石を拾えば済みそう?なぜハンマー使うのでしょうか?ルーペを使った岩石観察から見えてくるものの面白さとは!?ひみつ道具というよりは、必須道具「ハンマー・ルーペ」を紹介したいと思います。

1、なぜ石を割るのか

まず、観察のためです。岩石の表面は風化しているため、割ることにより内部の新鮮な部分を出します。鉱物や鉱物の並びが観察しやすくなります。また、大きすぎても岩石カッターに入らないため、にぎりこぶしくらいに割ります。※鉱物:岩石を構成する粒々のこと

緑色のかんらん岩が風化して褐色となった部分

2、ハンマーの平らな方を使う

とがっている方で岩石を割ると思われがちなのですが「平らな方」を使います。とがっている方は掻きだす時などに使います。割り方にはいくつかテクニックがあるのですが、最も重要なことは「割れると信じて割ること」だと思っています。しかし、さすがにかたい様似町のかんらん岩は、2倍ほどの重さがあり且つ柄が長いクラックハンマーの使用頻度が高めです。

ハンマー

3、玄武岩と泥岩の違いに苦しむ

私は玄武岩を研究していましたが、しばらく野外で「玄武岩と泥岩」の見分けがつきませんでした。何枚も岩石薄片を作って顕微鏡で観察して違いを確かめた過程を経て、見分けられるようになりました。これは「10倍ルーペ」を用いて、斜長石という鉱物の劈開(キラキラ光る)と、単斜輝石という鉱物を見ています。同時に「仮説」を立てることを学び、露頭の岩石にへばりついて「泥岩と玄武岩」を観察したことで、未固結の泥岩中に玄武岩溶岩が貫入した証拠を観察することができました。ねらったものを発見するというところにもフィールド科学の面白さがあると思います。

玄武岩と泥岩の露頭

4、最後にたかが石ころではなく、長い年月がかかってできた岩石であり、私がハンマーで露頭破壊すると、もう二度と地球がつくりだすことはなく、ここから必ず成果を出すと思い、石を扱っているのだと自戒を込めて岩石を割ります。

<様似町アポイ岳ジオパークビジターセンター 学芸員 加藤聡美>