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旅は道連れ? 古文書調査のお供に…【コラムリレー06 第19回】

仕事柄、しばしば、デジタルカメラで古文書や絵画・写真資料の撮影をすることがあります。職場では所蔵資料をデジタル化するため、よその博物館へ資料調査にお邪魔した時には研究を進める上での材料を手に入れるため、展覧会を担当した時には図録用の写真として活用するため、などなど、目的はさまざまです。

そんな時に活躍するのが「三脚」。

ひみつ道具感は全然ありませんが、今回は、自分が愛用している職場の機材について紹介します。

折りたたむと全長は約80cm、重さは約2.5kg。携行するには少しかさばる感じはありますが、よく一緒に資料調査の旅に出かけている「友」です。3本の足とエレベーター(センターポール)部分はイギリスのBENBO製、雲台(カメラを固定する部分)はイタリアのManfrotto製です。足は2段階で最長約110cmまで、エレベーターも最長40cmほど伸ばせます。

基本スタイルとして、一般的な三脚と同じように、エレベーター部分を垂直に立てた形で撮影出来ます。雲台の角度を変えれば、カメラの角度を自在に操ることも可能です。

※この原稿執筆用に、広い場所で撮影したイメージ写真です。実際の撮影環境とは異なります。

ここまではある意味、当たり前なのですが、この三脚の何よりの特徴は、3本の足とエレベーターを連結する部分のレバーを緩めると、足とエレベーターの角度を自在に動かせる点にあります。それを活かして、自分は、次のようなスタイルで使うことが多いです。

※エレベーター部分の右端にぶらさがっているのはMyカメラバッグ。カメラの重みで三脚が前倒れしないための重しです。

3本の足を二等辺三角形を描くように配置し、その上でエレベーターを床面と平行にし、出来るだけ前面に雲台部分をせり出させます。そうすることで、接写台を使う時のように、古文書や絵画などの平面的な資料を垂直方向から撮影することが可能になるのです。もちろん、資料は、床に直接ではなく、きれいな布の上に置いています。

カメラまでの高さを100cmほどは確保出来るので、簡易的な接写台よりは大きなサイズの資料を撮影することが可能ですし、何より、接写台を、交通機関を利用した調査旅行で携帯することは困難なので、その点でも重宝しています。加えて、簡易的な接写台では、資料を置く台が小さく、資料がはみ出てしまうことがありますが、床面を利用するので、その心配はありません。

撮影は、布をはさんで三脚の対面に座って行っています。デジタルカメラの画面の角度を変えて、下から画面を見上げながら、リモコン操作でシャッターを切ります。

また、細かい話ですが、横帳や大福帳といった様式の古文書を撮影する時にも威力を発揮します。このような横長の冊子は、見開きで撮影すると、写真上、文字が判読しづらくなってしまうことが多いので、通常、片丁ずつ撮影をします。その場合、一般的な接写台だとカメラや台自体を動かせないので、資料本体を左右に動かさなければなりません。手間がかかりますし、時に資料にダメージを与えてしまう恐れもあります。その点、この三脚を使うと、床面に敷いた布を左右に動かすことで、資料に直接触れることなく、効率的に左右の丁を交互に撮影することが出来るのです。わかりづらい話かもしれませんが、きっと、こうした古文書を撮影した経験がある方は、その便利さに納得いただけるのではないでしょうか。

このBENBO製の三脚について、インターネットで検索すると、自在に足やエレベーターを動かすことで、足場が不安定な岩場での撮影にも重宝するといった記事も見られました。

自分は、写真撮影に関しては素人なので、この三脚の潜在能力を十分に活かし切れていないのですが、これからもいろいろと試してみたいと思っています。

<北海道博物館 学芸員 三浦泰之>