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岩石薄片から読み解く地球の歴史【コラムリレー第15回】

岩石薄片というものを見たことがありますでしょうか。岩石をカットし、薄いガラスに貼りつけ、厚さ0.03mmに研磨したものです。偏光顕微鏡を通して岩石薄片を見ると、岩石に含まれる鉱物を識別することができます。

北海道様似町産のかんらん岩の偏光顕微鏡写真

かんらん岩は、主にかんらん石(上の写真では、ピンク色、青色、緑色)という鉱物で構成されます。

実は、かんらん岩の岩石薄片は緑色です。偏光顕微鏡を通して岩石薄片を見るとカラフルに見えます。

偏光顕微鏡と北海道様似町産かんらん岩薄片

他の石と見比べてみましょう。

北海道士別市産のドレライト偏光顕微鏡写真

ドレライト(玄武岩に近い岩石)は、マグマが冷えて固まった石です。主に斜長石(白色、灰色)と単斜輝石(オレンジ色、青色、黄色)などの鉱物で構成されます。

鉱物の違いは、色や形などから判別します。ちなみに、岩石名は鉱物の量の違いによってつけられることもあります。また、玄武岩などの火山岩は、鉱物が細粒でルーペで見ただけでは鉱物を識別しにくいため、化学分析し二酸化珪素の量の違いで分類されることもあります。

 

さて、岩石薄片からは、さらに何を読み取ることができるのでしょうか。

私が学生の時に研究をしていた、士別市岩尾内ダムに産出する溶岩を例に紹介したいと思います。

ここは溶岩が冷えて固まったドレライトがみられる場所です。私は層厚(溶岩が貫入した基底面から図った長さ)22mほどの、とある溶岩に注目して研究していました。

私は基底から規則的な方向に向かって、およそ1m間隔(気になるところはもっと細かな間隔で採取)で岩石を36個採取し、岩石薄片を作り、細かく比較することにしました。

岩尾内ダム湖岸と岩石採取の様子

この溶岩の外側と内側の斜長石の大きさを比較してみると、外側(接触部および接触部から20mのサンプル)は細粒サイズが多く、内側(接触部から10.8mと19.2m)は粗粒サイズが多いことがわかりました。次の写真では、同じ倍率の写真を並べました。接触部からの距離変化と斜長石の大きさの変化に注目してみてください。

斜長石の粒度変化

このことからこの溶岩は大局的には、外側から内側に徐々に冷えていったこと。外側は急に冷えるため細粒で、内側はゆっくり冷えるため粗粒になることがわかりました。ちなみに、このことはこの溶岩だけに限った話ではなく、溶岩一般に言えることです。

また、薄片1枚につき100~300個の斜長石の大きさを測り、薄片1枚ごとの斜長石の大きさ平均を数値化し比較するということを行いました。

これらのことから、わからないことは多く日々勉強を続けなければならないこと、データをとり記録しなければ残らないこと、適切に使わなければ残らないこと・伝わらないこと、わかりやすく伝えなければならないことを学びました。

 

最後に、小コラムです。今回は溶岩の話をしました。また日本は世界の7%にあたる110の活火山を有する世界有数の火山国で、火山が噴火し溶岩噴出する映像を見たことがある方は多いと思います。この溶岩どこからやってくるのでしょうか?

様似町栄町から見たアポイ岳

溶岩が地下にあったときはマグマと呼ばれ、マグマは地下数km~数十kmにあるマントルが供給源です。マントルはかんらん岩でできていると考えられています。このような地下深くにあるはずのかんらん岩を、実際に手で触れられる場所の一つが様似町にそびえるアポイ岳です。

<アポイ岳ジオパークビジターセンター  学芸員補 加藤聡美>