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岩石薄片からのぞく、石の世界【コラムリレー第35回】

かんらん岩は緑色の石ですが、光が通る薄さに削った薄片を、偏光顕微鏡で見てみますと…

かんらん岩薄片写真

別世界が広がっています。来館者から「万華鏡のようにきれいですね」と感想をいただくことも。

これは、北海道様似町で産出したかんらん岩の岩石薄片(はくへん)です。数十年前に製作されたもので、製作者は様似町に調査研究に来ていた学生です。ちなみにこの薄片をつくるためには、最低3日間かかり、何度も研磨材を変え薄くしていき、片減りをせずに一様な厚さ(0.03mm)に研磨していく技術の結晶です。(この薄片全体写真は、偏光フィルム2枚、ライトテーブルを使って、デジタルカメラの接写で撮影しました。)

薄片を詳しくみてみましょう。色に注目しますと、赤・黄・緑・青・灰・黒色など、カラフルな色の粒々が見られます。この粒々一つ一つが鉱物です。研究者は、鉱物の大きさ、鉱物の形、鉱物の並び方などに注目します。これらには、すべて意味があり、石のできかたを教えてくれます。野外での地質調査、岩石薄片による記載の積み重ねによって、大きなことがわかってきます。

かんらん岩は世界中で産出しますが、カラフルではないことも多いのです。これはかんらん石が蛇紋石などの別の鉱物に変質するためです。蛇紋岩に変質していない新鮮なかんらん岩が産出することに、幌満かんらん岩体の学術的価値があります。もちろん蛇紋岩の研究は世界中で盛んにおこなわれています。

「この石は何ですか」と聞かれることが多いのですが、石の肉眼観察では、厳しいこともあります。薄片を作成し、偏光顕微鏡で高倍率で、鉱物による色・模様・光り方(消光)の違いを見ることで、より岩石の情報を得られるようになります。

顕微鏡をのぞかなければ見えないため、当館の秘蔵品としました。

 <アポイ岳ジオパークビジターセンター 学芸員 加藤聡美>