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厚沢部町矢櫃のヒノキアスナロ標本 【コラムリレー第40回】

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当館には、森林管理署から寄贈していただいた樹木標本(丸太標本、大型円盤標本、種子標本など)が多く保管されています。

中でも非常に大きくて目を引く、厚沢部町矢櫃で採取されたヒノキアスナロ(Thujopsis dolabrata var. hondae)の大型円盤標本をご紹介します。
厚沢部町付近は北緯42度、ちょうどヒノキアスナロの自生北限地帯に位置しており、豊かなヒバの天然林が残されている事でも知られています。
ヒノキアスナロは大変長寿な樹木で、標本となった木も樹齢は320年です。
この標本のある一部分の年輪幅を測ってみると、0~100年で11.0㎝、100~200年で13.2㎝、200~300年で34.3㎝というペースで肥大成長をしていることがわかります。
ヒノキアスナロの森の内部は光が届きにくいせいでとても暗く、稚樹が日光を十分に得られるようになるまでには、周辺の木以上の樹高が必要となり、そこまで成長する為にはとても長い年月がかかります。
この標本となった木も200年程度成長するまではほとんど日光が当らず、それでもゆっくりと背丈を伸ばし、後に樹冠に日光が十分に当たり始めてから一気に成長したのではないかと予想されます。
耐陰性の高いヒノキアスナロならではの、とても気の長い生き方です。

以上、樹木が生きた歴史がつまった大型円盤標本をご紹介しましたが、教育林一番の秘蔵品といえばやはり教育林内で現在も生き続けるヒノキアスナロの巨樹、「ヒバ爺さん」でしょう。(「ヒバ」はヒノキアスナロの呼称です。)
「ヒバ爺さん」は一説によると樹齢600~700年ともいわれています。
標本からだけではわからない、生きた樹木から感じられる事も沢山あるのではないでしょうか。

当館で標本をご覧になった後には、ぜひ実際に林内を歩き、生きた樹木にも触れてみていただければと思います。

<土橋自然観察教育林 教育林コーディネーター 水本 絵夢>