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オホーツク文化の骨角器ーレプリカの活用ー【コラムリレー第33回】

牙製シャチ・クマ(湧別町川西オホーツク遺跡)

牙製シャチ・クマ(湧別町川西オホーツク遺跡)

○オホーツク文化の骨角器(こっかくき)の代表格

紹介する湧別町の秘蔵品は「牙製シャチ」と「牙製クマ」と呼ばれるもので、セイウチの牙を加工して作られた彫刻です。

それらが出土したのは湧別町のオホーツク文化の遺跡「川西オホーツク遺跡」で、昭和35年に網走市立郷土博物館が行った発掘調査で発見されました。オホーツク文化はロシアから北海道にかけてのオホーツク海沿岸部に存在していたことから名付けられ、北海道では5~9世紀頃に展開していました。オホーツク文化はアイヌ文化に影響を与えていたと考えられており、アイヌ文化で「沖の神(レプンカムイ)」とされるシャチ、「森の神(キムンカムイ)」とされるクマ、がオホーツク文化の彫刻として残されていることは両文化の関係性を知るために非常に重要なものと考えられています。

 

○ただし、湧別の展示はレプリカ

湧別町郷土館で堂々と展示されている牙製シャチ・クマですが、実はレプリカです。

実物資料は発掘調査を行った網走市立郷土博物館が所有・展示しているためです。しかし、地元博物館としては地元で出土した有名な資料は展示・活用したいため、レプリカ製作の許可をもらいました。レプリカ製作は専門業者にお願いし、「型取り」と呼ばれる方法で作られ大きさは数ミクロンしか誤差がなく、重さについても実物に限りなく近づくよう調整され、色彩は職人がほぼ完全に再現してくれました。そのため真偽の判断については専門家が両者をじっくり見比べないと不可能なほどです。

 

○レプリカの活用

展示室でレプリカと表示していても、来館者が一番興味をもって見てくれるのは牙製シャチ・クマです。実物ではなくても、他の資料に比べて圧倒的な存在感があるからでしょう。

レプリカの一番の良さは展示以外にあり、出張授業など館外活用のしやすさや、実際に触れてもらえる機会の多さです。当然、レプリカであっても取扱いには実物同様の慎重さが必要ですが、それを重視するあまり展示ケースに置いたままでは実物と変わりません。思いきって多くの人に触れる機会を設けることはレプリカにしかできません。博物館に足を運べない学校への出張授業や、小学生から高齢者のような専門家でなくても実際に触れることのできる講座などで大活躍しています。牙製シャチ・クマのレプリカは、もはや湧別町にとっては実物に勝るとも劣らぬ、いや、親しみやすさでは実物以上の価値をもつ資料です。

 

【湧別町ふるさと館JRY・郷土館 学芸員 林 勇介】