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マダニの標本作製に-納豆容器のフタ- 【コラムリレー06 第31回】

 突然ですが、みなさんはマダニに咬まれたことはあるでしょうか。ありがたいことに、私はまだありません。私は仕事柄、北海道のアポイ岳という山によく登るのですが、マダニは服の上にたくさん付きます。つい先日、ジャスティン・ビーバーさんがライム病であることを告白したニュースが話題になっていました。ライム病は、マダニが媒介する感染症の一つです。アポイ岳の登山客は、ヒグマに対する意識が高い方が多いのですが、マダニについてどのくらい知っているのかは不明です。マダニの標本を作って多くの来館者に見ていただき、マダニについての理解を深めていただきたいと思いました。

納豆容器のフタは重ねることができます

 そこで登場するのが、私のひみつ道具「納豆容器のフタ」です。マダニは死亡すると脚がクルクルと内側に曲がり、背面から見ると脚が全く見えなくなってしまいます。もっと良い方法があるのかもしれませんが、私は普段よく食べている納豆の容器のフタを使って、マダニの脚を広げたまま乾燥する道具を作りました。作り方はとても簡単で、納豆容器のフタにマダニが収まる大きさに小さく切った両面テープを貼るだけです。死んだマダニを両面テープに貼り付けて脚を好みの形に広げ、2週間そのまま乾燥させると、マダニの脚を広げたまま固めることができます。

納豆容器のフタを使用する利点は以下の3点です。

利点① 安価でどこでも入手できる

納豆をほぼ毎日食べる私にとっては、これまではただのゴミでした。

利点② 場所をとらない

マダニを貼り付けた納豆容器のフタは、重ねることができます。引き出しに入れても場所をとりません。

利点③ 展足が短時間ですむ

脚を広げてテープに軽く押し付けるだけなので、あまり時間がかかりません。

 良いこと尽くめのように見えますが、実は欠点もあります。ここまで読んでいて気づいた方もいるかと思いますが、テープからマダニを外すのが難しいのです。コツは、ピンセットの先でマダニの脚の下の発泡スチロールを押すように1本ずつ脚をテープから剥がし、剥がれたテープの面にハンドクリームを薄く塗ります。こうすることで、一度テープから剥がれた脚が再びテープに付くのを防ぐことができます。

レジン(樹脂)に封入したマダニ

  納豆容器のフタから外したマダニは、種名を印刷したラベルと一緒にレジンで封入してみました。マダニが壊れる心配をすることなく手に取って観察することができます。

<様似町アポイ岳ジオパークビジターセンター 地域おこし協力隊 水永優紀>