今回紹介するひみつ道具は、「携帯用ストロボ撮影セット」です。ひみつ道具といえるほどのものかどうかはわかりませんが、私にとっては博物館で展示の仕事を行ううえで欠かせない大事な道具の一つです。
私が勤める北海道博物館では、毎年特別展を開催しています。特別展では、北海道はもとより全国各地の資料を借用し展示するとともに、写真を豊富に掲載した図録冊子や展示パネルを製作します。そのため、資料の撮影や調査は全国各地に及び、移動距離も大変長くなります。1週間以上かけて各地をまわることもあります。この撮影の旅で力を発揮してくれるのが、持ち運びに便利な「携帯用ストロボ撮影セット」なのです。
この「携帯用ストロボ撮影セット」は、いうまでもなくストロボ撮影を行うための道具一式がコンパクトにまとめられたものです。SAVAGE社製S-150ストロボキットとして販売されていました。キャリーケースの大きさは、横80㎝、縦25㎝、高さ25㎝で、この中に組み立て式のストロボ撮影機材などがぎっしり詰め込まれています(写真1)。撮影の旅では、カメラバックとカメラ三脚を肩からかけて持ち、「携帯用ストロボ撮影セット」は、車輪のついたスーツケースの上に乗せてコロコロと引いて運びます。このようにすれば、一人で撮影機材一式を持ち運ぶことが可能です。
早速、中身をみていきたいと思います(写真2)。ケースの中には、ストロボ2個、ストロボ用三脚2個、アンブレラ1個、ソフトボックス1個、配線コード類4個が入っています。これらは、元々セットになっていたもので、それに加えて背景紙(筒に入っています)、ガムテープ、アルミホイル、延長コードを入れています。コンパクトなケースですが、ストロボ撮影に必要な全ての道具が、すきまなく機能的に収まるようになっています。
これらの道具を組み立てた状態が写真3です。写真3(左)は、ストロボを三脚に設置し、アンブレラを装着したものです。アンブレラはストロボの光を反射させて、光量を調整するために装着します。写真3(右)は、同様にストロボを三脚に設置し、組み立てたソフトボックスを装着したものです。ソフトボックスもストロボの光をやわらげ、光量を調整するための道具です。これらのストロボとデジタルカメラをコードで接続し、シャッツターを押せばストロボが光り、撮影ができます。 後から加えた道具である背景紙は、撮影資料のバックに設置するもので、平面に置いたり、ガムテープで壁に貼り付けたりします。ちなみにアルミホイルは、何に使うのかと不思議に思われるかもしれませんが、例えば土器などを撮影する場合に、アルミホイルを丸めて、土器の底にいれて安定させたり、土器の撮影角度を調整したりするために使います。時にはアルミホイルを厚紙などに貼って、ストロボの光を反射させるレフ板として使用することもあります。
さて、写真4は実際の撮影風景ですが、「携帯用ストロボ撮影セット」は、近年の特別展である「幕末維新を生きた旅の巨人 松浦武四郎展」、「北の土偶展」、「北の縄文展」などの資料撮影で大いに活躍しました。「北の土偶展」、「北の縄文展」では、東北地方~北海道各地をともに旅して数百点の資料を撮影し、セットの設置を10分、撤収を10分でこなせるようになりました。「松浦武四郎展」では、三重県松阪市から東京への移動中、セットを縦に抱きかかえて満員の東京山手線電車に乗りこんだことが思い出になっています。 このように苦楽をともにしてきた「携帯用ストロボ撮影セット」は、信頼できる仕事の相棒です。これからもよろしくお願いします。
<北海道博物館 学芸員 鈴木琢也>