江差を訪れた観光客の方に「江差といって思い浮かべる魚は?」と尋ねると、ほとんどの方は「ニシン」と答えます。
確かに、江戸時代から明治時代にかけての江差は、江差やその近辺で獲れたニシン加工品の出荷地として、北前船が行き交っていました。
しかし、当然ですが獲れていた魚はニシンだけではありません。
江戸時代末に江差を訪れた松浦武四郎は、江差の南隣に位置する五勝手村(現、江差町)の産物として、「鯡・数の子・サヽメ昆布・鱈・此目魚・カスベ・油コ・ホツケ・海苔・其余雑魚多し」(「蝦夷日誌」)と記しています。
今回は、そのなかでもホッケに関わる資料をご紹介します。
写真の資料は、旧檜山爾志郡役所(江差町郷土資料館)で常設展示している、ホッケを材料にしてカマボコを焼く道具です。タマゴ焼きを焼く道具のように四角い形をしています。銅で出来ていて、蓋も付いています。
江差では、現在でも写真資料と同じような道具を用いて、ホッケのカマボコを製造している業者があります。以前に調査をさせていただき、次のような調理方法だと教えていただきました。
- ホッケを3枚に下ろして皮も引き、しばらく水にさらしておく。
- 調味料や卵などをお好みで加えて、すり身にする。
- 焼き器を火にかけながら十分に油を塗り、すり身を入れる。
- 弱火でじっくり1時間ほどかけて両面を焼く。
出来上がりは、大きなタマゴ焼きのようになります。
ホッケのカマボコが、いつ頃から江差で作られていたのかはわかりません。江差の方に聞くと、「薪ストーブの上で焼いた」とか、「蓋の上に炭をのせて焼いた」など、作り方も人や時代によって様々です。
食べ方も、ワサビ醤油で食べたり、煮物に入れたりとバリエーションがありますが、私のお勧めは七味マヨネーズです。
いまでも、江差の一部のお土産屋さんで買うことができます。江差を訪れた際には、ぜひご賞味下さい。
(江差町教育委員会 学芸員 宮原浩)