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博物館の本、読んでみませんか?【コラムリレー第31回】

このホームページは「集まれ! 北海道の学芸員」ですが、博物館には学芸員以外の職員もいて、私は開拓記念館の「情報サービス室」という図書室で、司書をしています。

何で博物館に司書がいるの? と思う人は多いかも知れません。開拓記念館では、職員の調査研究のために12万8千冊の図書を持っています。1ページのニュースレターも1冊、と数えているので膨大な数になってしまいますが、実際100㎡ちょっとの書庫はもう飽和状態で、館内のあちこちにスペースを見つけながら図書を置いています。書庫はお客様が調べ物をしたり、質問をするために常設展示室地下に作られた「情報サービス室」と扉を隔ててつながり、お客様からのお問い合わせに応じ、参考になりそうな図書を書庫から出し、閲覧していただいているのです。

ちなみに書庫の中は、このようになっています。

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いきなり殺風景で、ごめんなさい。実は開拓記念館は11月3日から休館し、平成27年春に「北海道博物館(仮称)」としてリニューアルオープンします。すでに館内では工事が始まり、今は本のほとんどが箱の中です。

玄関ホールには、こんな看板も登場しました。

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この「休館まであと○○日」の看板、常連のお客様から「宇宙戦艦ヤマトだ!」と言われました。何でも、テレビアニメ「宇宙戦艦ヤマト」の終わりに毎回流れていた「人類滅亡まであと○日」というテロップを思い出すそうでして(¯∀¯;)。せっかく作ったのに、縁起が悪いなあ…と思います。

 

ところで皆さんは、このサイトの「調べる」というカテゴリを見たことがありますか? ここには道内の博物館が発行した、刊行物の情報が掲載されています。実は開拓記念館が持つ蔵書のうち、およそ4万6千冊が、道内・道外のさまざまな博物館から寄贈された博物館の刊行物です。

この多くは500部とか1000部という単位で作られ、関係機関に配布されたり館内で販売されますが、書店やAmazonなどでは購入できませんし、公共図書館や大学図書館にもあまり所蔵がありません。このような一般の流通ルートに乗らず入手しずらい出版物は、図書館の世界で「灰色文献」(gray literature)と呼ばれています。

 

博物館は地域の歴史や自然環境を日々調査・研究し、その成果を刊行物にまとめ、展示や行事という形で皆さんに紹介しています。博物館の刊行物は流通が少ないためあまり人々に知られていませんが、実は地域研究の文献としてはとても貴重なもので、開拓記念館でも、お客様から難しい質問があった時に、その土地の博物館の刊行物を使ってお答えするということがよくあります。

幸い、開拓記念館は1年半ほど休館しますので、この間に紙目録をデータ化してお客様が館内で検索できるようにしたり、刊行物の紹介コーナーを作ることはできそうです。

しかし近年はインターネットでの調べ物が当たり前となり、Web上で検索されない情報はないものとされる時代になってきました。このような時代に、博物館の刊行物の情報をどのようにまとめ、公開すれば「灰色文献」から脱却できるのだろう? …悩みは尽きません。

 

先日、図書を見ていた学芸員が「変なもの見つけちゃった…」と笑うので、何かと思い覗いてみたら、『知床博物館研究報告 第35集』の末尾にある、投稿規定の部分でした。知床博物館は、職員だけでなく館外の人にも広く寄稿を求めていて、投稿規定が細かく定められています。そのなかに、引用文献の記載のしかたが書いてあるのですが、よく見ると記載例がなんともおかしい…。博物館はこのような遊び心が大切、と深く感心してしまいました。(気になる方は、知床博物館ホームページの「紀要と年報」のページを見てみてくださいね!)

コラムリレーのお題「北海道で残したいモノ、伝えたいモノ」は、博物館の刊行物。これは博物館の司書としての思いであると同時に、こんな本がある、こんなことが書いてあるという心動かされた気持ちを、私自身もいち読者として、多くの人と共有したいのかも知れません。

 

<北海道開拓記念館 司書 櫻井万里子>

 

次回のコラムリレーは、浦河町立郷土博物館の伊藤昭和さんです。どうぞお楽しみに!