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宝探しと文書の解読【コラムリレー07 第17回】

 「調査・研究」と聞くと皆さんどのようなものを想像するでしょうか。最初にまず明確な「テーマ」があり、綿密な計画を立てて多くの調査員によって実行される…そんなイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。

もちろん上記のような大規模に行われる場合もあれば、それぞれの学芸員が日々テーマを持ち、長い期間積み重ねている場合もあります。しかし、本当に突然お話が舞い込んでくる場合もあります。

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 「捨てようかと思ったんだけど、その前に見せてみたらと言われて…。」

 石狩市内にある樽川神社の方からのお電話でした。

詳しく聞いたところ、事務所の掃除をする中で見つかったものがある。よくわからないものも多いので捨てようかとも思ったけれど、捨てる前に資料館に見てもらってはどうかと言われて…というお話でした。実際に伺ってみると、私たちにとってはお宝ともいえるものが見つかりました。

「樽川神社創立願」

 この資料は北海道庁長官宛に出された「神社創立願」をはじめとした樽川神社に関する資料の写しです。「神社明細帳」、「予算調書」や「氏子名簿」等、神社を創立当時の祭神や由緒などの情報から、神社創立に必要な資料(今なら申請書といったものでしょうか)、どんな人が声掛けをしたのか、どんな理由で申請したのか、今まで明らかになっていなかった、その資料にしか書かれていない様々なことがわかります。神社そのものについてはもちろんのこと、地域の歴史に関することも知る大きな手掛かりとなるのです。

 さて、そんな大事な資料ですが見つけたからおしまいではなく、ここからが本番です。この資料が何ものなのか、つきとめなければなりません。と言っても、今回は神社関係資料ということがわかっているので、解読作業が主なお仕事です。

資料の記録や解読するための資料の撮影(スキャン)が終わると早速、解読を進めます。印刷したものに読んだ文字を書き込んだり、最初からパソコンに入力したりやり方は人によって様々です。ここでさらっと全文読めれば非常にかっこいい、さすが学芸員!となるのかもしれませんが、残念ながら私にはそれができないのでまずは不明な部分、調べる部分が穴あきのものができます。

印刷した写真に直接書き込んだもの
入力例(■部分が不明箇所、誤字脱字等確認前のもの)

 次に不明だった箇所を辞書等で調べて埋めていきます。辞書で調べながら少しずつ文字を埋めたり、誤字や脱字を訂正したりの作業を繰り返して、「解読文」が完成します。ここまでで一度作業に区切りがつけられます。

 今回のような文書資料に関しては、解読文作成で一旦終わることもあれば、すぐ次の研究に活用しようと情報収集に移る場合もあるでしょうが、いずれの場合も調査・研究結果を広く人々に知ってもらうまですべてが学芸員のお仕事です。

 ここで最初のお話に戻ります。綿密な計画があり、大勢の調査員で…という「調査」が広くイメージされるかもしれません。しかし、今回のように「捨てる前に一応…」そんな一言から始まった調査がとても大事な情報につながることがしばしばあります。ネットで検索すれば公式HPが出てきたり、ネット辞書が出てきたり、ブログが出てきたり、基本的なことはクリック一つでいくらでもわかる時代です。古い紙束、正体不明の石や破片、家族が使っていた古い食器や家具、家電等一見不要なものに見えてすばらしく価値のあるものが見つかり、学芸員のお仕事につながることがあります(その確認ももちろん学芸員のお仕事の一つです)。

捨てる前にちょっとだけ確認してみませんか。それ、お宝ではありませんか?

〈いしかり砂丘の風資料館 坂本恵衣〉