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全国の珍しい本、取り揃えております ―博物館の図書室から―【コラムリレー第26回】

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開拓記念館の図書室では、学芸員が研究したり、お客様からの質問に答えるために多くの本を所蔵しています。しかし北海道だけをとりあげた本は意外と少なく…実は、全国の博物館から寄贈された展示会の図録や、資料目録・研究報告書の所蔵が多いのです(都道府県立はほぼ全て、他に国立、市町村立、私立博物館もあります)。これらの本は、本州から北海道に移住した人びとがもたらした文化のルーツを調べたり、北海道と本州の自然環境や文化の違いを知るための貴重な手掛かりとなるため、開館以降大切に保管を続け、現在はざっと本棚50本分位の量になっています。先日、たまたま書架の整理をしていて、ある本が目に留まりました。

「津波をみた男 ―100年後へのメッセージ―」(大船渡市立博物館 編集・発行)

明治29(1896)年に三陸地方沿岸を襲い、二万二千人の命が奪われた明治三陸地震による大津波から100年後、平成8年に大船渡市立博物館が開催した展示会の図録(展示解説書)です。岩手県の実業家 山奈 宗真(やまな そうしん)は、沿岸部の経済や産業の復興策を探るため、志願して津波の被害を調査しました。図録は地区ごとに、見開き右ページには宗真のスケッチを、左ページには平成8年当時の地形図と写真を配置し、ひと目で100年の比較ができるよう編集がなされています。

図録によると、宗真の報告書は住居を高台に建て生活と仕事の場を分けること、防潮林と堤防を併用することなど貴重な提言が数多く含まれていたものの、当時はほとんど活用されなかったそうです。このため宗真は後世の活用を期待し、帝国図書館(現在の国立国会図書館)に報告書を寄贈したと伝えられています。この図録からは、時とともに風化される津波の記憶を、後世に伝えたいという宗真と博物館の願いが感じられ、本は多くの人に読まれるようにしてこそ価値が生まれ、作り手の気持ちに報いることができるということを、改めて感じさせてくれます。

現在開拓記念館は平成27年春のリニューアルに向け休館中で、図書室も、お客さまがたくさんの貴重な本と出会える場所となるよう準備を進めています。オープンのさいには、ぜひ地下の図書室へも足をお運びください!

(北海道開拓記念館 櫻井 万里子)