Breaking News
Home » 北海道150年、学芸員にはどう見える? » 地域を見守るおひな様【コラムリレー第27回】

地域を見守るおひな様【コラムリレー第27回】

3月3日は、桃の節句「ひな祭り」です。福島町チロップ館(旧白符小学校)では、毎年2月下旬から5月上旬、春の恒例行事として「ひな・武者人形祭り」を開催し、明治~大正から平成までのひな人形や、五月人形など100組以上の人形を一堂に展示しています。普段は収蔵庫で眠るおひな様達にとっては、年に一度の晴れ舞台です。

今回は、「ひな・武者人形祭り」の展示のうち、福島町の代表的なひな人形を紹介いたします。

江戸風の古今雛

こちらは、福島町の旧家に伝わっていた町内で最も古いひな人形です。 袖を高く張った男雛と、袖の中に手を隠してしとやかな佇まいの女雛、江戸風の古今雛です。特に、男雛の片腕を高く掲げる姿が印象的です。目が細く面長で雅な表情は、目鼻立ちのはっきりした現代のお雛様とは少し趣が違います。人形の年代について持ち主の方からお話を聞くと、大正時代まで遡ることがわかりましたが、人形のかたちからみても更に古い時代のひな人形である可能性もあると考えています。 また、この内裏雛といっしょに側仕えの三人官女や五人囃子も伝わっていました。どの人形も、制作年代や作者がばらばらになっています。この頃は、人形と道具一揃いをまとめて買うのではなく、親の代から引き継いだ雛飾りに、長女が生まれた時に買った三人官女をあわせ…次女が生まれたら五人囃子…というように、そのときどきで気に入ったものを買い集めていたようです。

 

台所道具や掃除道具
昔のおまるまで…

また、このお雛様と一緒に普段遊びのお人形やままごとの道具も展示しています。 台所道具や掃除道具などがかわいらしく再現されていて、当時の暮らしを感じることができます。このように、ひな祭りとは直接関係ないお人形も一堂に飾ることもあったようです。

「御殿飾り」のひな人形

こちらは、大正~昭和頃の「御殿飾り」のひな人形です。 「御殿飾り」は、江戸時代に西日本を中心に流行した飾りで、戦前にはこれを簡略化したものが広い地域で流行し、数多く作られるようになります。福島町の「御殿飾り」もこの時期に本州から持ち込まれたものでしょうか。昭和中頃以降、百貨店によるひな人形の販売が始まるとともに姿を消し、近年ではほとんど見かけることのない飾りです。

ひな人形を観察すると、昔の暮らしぶりを読み取ることができるだけでなく、子供たちの健やかな成長を祈り人形を大切にしてきた人々の長年の思いを感じることができます。近年、毎年のようにひな人形を飾ってお祝いをするという家庭は少なくなってきておりますが、今この町に残されてきたひな人形達がこれからもずっと地域の子供達を見守ってくれるよう、大切に守っていきたいと思います。

福島町教育委員会 学芸員 鈴木志穂