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迎える、もてなす、また来てもらう【コラムリレー07 第27回】

 突然ですが、皆さんは“博物館のお客さん”と聞くと、どんな人びとをイメージするでしょうか?家族連れやカップル、友人同士、、、を連想する方も多いかもしれません。でも実は、“博物館のお客さん”のうち、かなりの割合を占めるのが、小学校や中学校、高等学校などの“学校団体のお客さん”です。当館でも、札幌市や近隣の江別市、北広島市の小中学生を中心に、時には修学旅行などで本州からやってくる学校団体のお客さん達を日々お迎えしています。

 団体、といえど学校なので、主に平日の来館が多く、当館の場合、多い時は一日に10〜13校ほどが来館、時には、一日2,000人近くの“学校団体のお客さん”が来たこともありました。もちろん、博物館には学校団体だけでなく一般のお客さんもいるため、混雑が発生しないよう例年8〜11月の繁忙期にはほぼ毎日入口に立ってお客さん達のお迎えし、大型バスの誘導などを行うこともあります。

 “学校団体のお客さん”には、展示室を見学してもらうことはもちろん、「はっけんプログラム*」というテーマ別の体験型プログラムや「グループレクチャー」といって学芸員がそれぞれの専門に沿った内容を講義形式で行う教育プログラムを体験してもらうことが多いです。こうしたプログラムに並行して複数の団体対応を行うため、その日一日の団体の動きが記された予定表を手元に、館内中を走り回っています。また、自分がレクチャーを担当する際は、子供たちの学年や住んでいる地域といった情報を元に、少しでも興味を持ってもらえるよう、地域の話題を盛り込むなど、いわば、学校ごとのカスタマイズ仕様にして、子供たちと博物館を繋げられるような工夫をしています。

【グループレクチャーの様子】

 また、学校の先生や旅行会社の方々の下見対応なども行なっています。授業の一環としてよく利用してくれる学校には、先生達と相談し、それぞれの学校の希望に沿った見学プランを提案したり、一緒に考えたりしています。さらに、修学旅行などで初めて当館を利用する学校に対しては、見学プランの提示だけでなく、展示場を一緒に歩いて見どころを紹介するなど、博物館の魅力を伝えるための営業活動も行います。

 しかし、今年はコロナの影響によって、当館でも休館措置をとったり、団体向けの体験プログラムを休止したり、、、とこれまでお客さんに対して行なってきたいくつかのサービスを中止せざるを得ませんでした。そんな中、どうしたらこの状況でも学校を受け入れることができるかについて他の学芸員と議論を重ね、少しでも学校の先生や利用者の不安を減らせるように心を注いだ一年でした。

【一般の来館者との接触を避け、団体用に確保した導線。
職員の手には消毒用のアルコールスプレーが。】

 そんな、少し前のある土日、博物館の入口でコロナ対応として家族連れのお客さんの入館受付をしていた時のこと。小学生くらいの男の子が私のそばにやってきて「この間、学校で来た時にお話をしてくれてありがとう!とっても楽しかったので、今日は家族を連れてきたよ!」と報告してくれたことがありました。

 学芸員冥利に尽きる、とはまさにこのこと、そして、お客さん達に博物館での滞在時間を少しでも楽しく、充実したものにしてもらえるよう「迎える、もてなす、また来てもらう」ために試行錯誤することも、学芸員の大事な仕事の一つだと改めて感じた一日でした。

*今年度は感染症対策のため、中止

<北海道博物館 学芸員 亀丸由紀子>