今回紹介するひみつ道具は、皆さんよくご存知の黄色いカゴ、「買い物カゴ」です。
私が使っているカゴの正式名称は、「スーパーカゴ(大)」、収納量が26ℓあるものです。以前は金物屋、現在ではインターネットの通信販売などでも手に入れることができるようになりました。決してスーパーマーケットから拝借してきたものではありません。
私が遺跡の発掘調査に携わるようになってから、かれこれ20数年の時が経ちました。この仕事を始めた頃には、収納具として当たり前のように使われていたことを思い出します。6名程度で一つの班を編成し、班ごとに移植ゴテや手グワ、炉ボウキ、水糸、コンベックス、筆記用具などの調査道具をカゴに収納して調査地点まで運んでいったものです。
現在もこのカゴを愛用しているのには、いくつか理由があります。美幌町の主な産業は畑作です。私の仕事の一つに遺跡の有無を調べることがあるのですが、その調査対象が畑の中であることが非常に多いのです。北海道の畑は広大です。その広大な畑の中を調査する際には、調査道具に加え、救急セットやハチ駆除スプレーなども携行して歩きまわります。そういった道具を持ち運ぶのにちょうど良い大きさなのが買い物カゴでした。
また、このカゴの利点として繰り返し水洗いできることも理由として挙げられます。畑の中での調査でもっとも気を使うことは、病害虫を持ち込まないようにすること、特にジャガイモシストセンチュウという病害虫に注意を払っています。ジャガイモシストセンチュウの分布拡大は、この病害虫に汚染された土の流入が主な原因となっています。観光地や大きな道路周辺の畑で、立入禁止を告げる看板が見たことがある方もいらっしゃるかと思います。これは靴に付着した汚染土が、畑の中に混入するのを防ぐためです。
土が汚染拡大の原因となりますので、調査を行う際には買い物カゴも含め、使用する道具に僅かな土も付着していてはいけません。また、調査を行なった畑が病害虫に汚染されている可能性も否めませんので、調査が終わればその度に道具の水洗と消毒を行い、次の調査に備えます。このように畑から畑へ土の移動を防ぐことで、病害虫汚染を予防しています。
このカゴのメリットをまとめると、比較的安価であること、軽量で頑丈、繰り返し水洗が可能なことでしょうか。
周囲を見渡すと、買い物カゴ愛用者は意外にも多くいるようで、博物館の防災設備を点検している会社の皆さんも道具入れとして使っているのを見かけました。職場で私の向かい側に座っているM学芸員も買い物カゴ愛用者で、通勤カバンがわりに使っています。ガーデニング用品やアウトドア用品を収納するといった使い方もできるかもしれません。私のオススメのひみつ道具、皆さんのご自宅の物置や車庫に買い物カゴをおひとつ備えてみてはいかがでしょうか?
<美幌博物館 学芸員 八重柏 誠>