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学芸員の本棚からオススメの一冊《博物館惑星》シリーズ

志賀さんに続いて、1月20日のオンライン研修会でオススメした本をこちらにも掲載します。

《博物館惑星》シリーズ 『永遠の森』『不見の月』『歓喜の歌』 菅 浩江 ハヤカワ文庫

博物館の仕事を知る、という点でのオススメではありませんが、博物館を舞台にした小説を紹介します。

ハヤカワ文庫に3冊収められている『博物館惑星』シリーズは、地球の衛星軌道上に博物館・美術館・植物園などの博物館機能を集めた博物館惑星〈アフロディーテ〉があるというSF小説です。そこで働く学芸員たちは高度な外科手術を受けることで、膨大なデータベースに脳が直接接続できるようになり(こう書くと怖い感じですが、実際にはデータベースとのやりとりはわりとほのぼのしています)、自らの力とチームワーク、そしてデータベースを駆使して仕事に取り組みます。現実世界の学芸員としては、「こんな検索機能、欲しいかも……」と思うこともあります。

設定こそSFですが、小説の中身は博物館惑星を舞台にした人やモノをめぐるトラブルやミステリーを解決していく物語で、SF小説に慣れていない人でも普通に楽しめると思います(私もSF小説はあまり読みません)。技術の向上により学芸員の採用年代によって接続できるデータベースに差があるため、新人がベテランに対して優越感を持つというような場面や、データベースに接続できない人からの「接続可能」な学芸員に対するやっかみの感情なども描かれていて、世界が違ってもやってることは同じだね、と感じます。短編集というのも読みやすいポイントです。

シリーズ1作目の『永遠の森』は2000年発行(文庫は2004年発行)で、続刊の『不見の月』『歓喜の歌』はそれぞれ2019年、2020年の発行です(文庫は2冊とも2021年発行)。『永遠の森』は書評本の紹介を見て買いましたが、『不見の月』『歓喜の歌』は書店に並んでいるのを見つけて購入しました。そのため、偶然単行本の新刊を見つけた『不見の月』だけハードカバーで持っています。『不見の月』を見つけた時は「あのお話に続きが……!」と、とても嬉しく思い、即買いしました。

子どもの頃から活字中毒で、博物館に職を得てからは博物館・美術館が舞台のもの、学芸員が出てくるものは、小説・マンガ等、気づいたら入手しています。合う・合わないはあり、途中でページが止まっているものもありますが、それでもなお、新たな出会いを求めて書店に通っています。

 

 

永遠の森 博物館惑星 (単行本2000年、文庫2004年)www.hayakawa-online.co.jp/product/books/20753.html…

不見【みず】の月 博物館惑星Ⅱ (単行本2019年、文庫2021年)www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014816/…

歓喜の歌 博物館惑星Ⅲ (単行本2020年、文庫2021年)www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014817/…

〈釧路市立博物館 加藤ゆき恵〉