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空間をつくる【コラムリレー07 第14回】

  • 博物館の印象

 博物館にいらっしゃるお客様は、初めに博物館の外観を見て、入り口に立ち、館内に足を踏み入れます。足を踏み入れると目に飛び込んでくるのは、照明や様々な案内板など。博物館の敷地に入ってから出てゆくまで、お客様が目にする全てが、その博物館の印象を形作ります。

 そういう意味で博物館は、料理を提供するレストランや、宿泊ができるホテル、品物を売るデパートと何ら変わりがありません。いい雰囲気だなとか、居心地がいいなと思った場所に、人はよい印象を抱き、また足を運びたくなるものです。

 

  • 美幌博物館の今

 美幌博物館は開館から30数年が経ちました。入り口にあった利用案内や館内案内図は古くなり、ロビーもなんとなく暗い雰囲気を醸し出していました。入館されたお客様の中には、受付や展示室の場所を探して、迷われる方が多くいます。そのため、少しでもお客様に快適に過ごしていただくために、どうしたらよいか知恵を絞り、時間を見つけて展示室内はもちろんのこと、展示室外の場所の改善に取り組んでいます。

30万人目のお客様を祝うため、手作りのくす玉を試す館長。

 これは、学芸員だけでできることではありません。日頃からお客様の様子をよく観察している、受付のスタッフや掃除をしている方の意見がとても役に立ちます。

 また普段より、お客様からご意見をいただいた時には、できるかぎり対応するよう心がけています。「サイレントクレーマー」という言葉があり、その方達が来館者の大部分を占めることを考えると、ご意見をいただけるのは有難いことなのです。ちなみに私はサイレントクレーマーという言葉を知ってから、自らが客になった時、改善点を見つけた場合は、できる限り伝えるようにしています。

  • デザインを知る

 空間づくりには、デザインの勉強も欠かせません。これは、広報や展示にも活かすことができるスキルですが、学芸員資格を得る過程で学ぶ機会はありませんでした。私は幸いにも、社会に出てからデザインに精通する人に出会う機会があり、デザインの基本や上達するコツについて教えていただくことができました。

上達するコツの一つに「デパートへ行け」というのがあります。特にデパートの1階には、人の目を引くものがたくさん詰まっているそうです。雑誌やテレビを見てデザインの流行を知ることも、日々の生活で実践しやすく役に立つことです。

 札幌駅に隣接するデパートや商業施設でキョロキョロと広告を見ているのも、美容室や病院に置いてある雑誌を食い入るように見つめているのも、実は仕事の一部なのです!(決して遊んでいるわけではありません。)

 見せたい展示がある博物館を、魅せる場所にする 「技」も、学芸員のお仕事です。

デパートにありそうな、入り口の吊り下げ幕。
お客様を華やかにお迎えしています。

美幌博物館 学芸員 城坂[平林]結実(しろさか ゆいみ)

※ 不満があっても何も言わずに離れていくお客さまのこと