4月中旬。森の中、キタミフクジュソウが黄色い花を咲かせると、ここオホーツク地方・美幌町の本格的な春の訪れです。
その後を追いかけるように咲くのは、エゾエンゴサク。淡い水色の花は、森に差し込む日に照らされ、ガラスのような輝きをみせます。
エゾエンゴサクの側にたたずんでいると、ブ~ン!という低い羽音が聞こえてきました。マルハナバチの女王です。2~3cmの丸い体のハチで、クマンバチともよばれます。
蜜を吸いながら、エゾエンゴサクの間を飛び回るマルハナバチ。よく見ていると、エゾエンゴサクの下方から上方へ移動しては、別のエゾエンゴサクへ飛び立っています。
このマルハナバチの動きには、エゾエンゴサクの見えない工夫が隠されているようです。下方の蜜量が多く、上方に向かうにつれ少なくなることが、下図のようなマルハナバチの行動を誘発し、自らの受粉を成功に導くのです。
このような蜜量の分布とマルハナバチの行動の関係は、エゾエンゴサク以外の花でも見られるのでしょうか。2003~2004年に、花の模型をつかって調べました。
3パターンの蜜量の分布と、3パターンの花の形を組み合わせた実験では、蜜分布がマルハナバチの行動に影響することがわかりました。しかし、花の形の影響については、はっきりとわかりませんでした(※1)。
花と虫の関係にひそむ、たくさんの秘密。その秘密に少しでも近づけるよう、今年もさぁ、マルハナバチ ウォッチング。
〈美幌博物館 学芸員 城坂(平林)結実〉
※1 Yuimi HIRABAYASHI, Hiroshi S. ISHII & Gaku KUDO, 2006. Significance of nectar distribution for bumblebee behavior within inflorescenses, with reference to inflorescence architecture and display size. Ecoscience, 13 : 351-359