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浦河の名所「西舎の桜並木」 【コラムリレー第30回】

浦河の観光名所となっている西舎の桜並木は「優駿さくらロード」と呼ばれ、5月上旬から中旬に約1,000本の桜が3㎞にわたり道路を覆うように色鮮やかな桜のトンネルが観られ、多くの来訪者でにぎわいます。

写真1 H25年の桜並木

写真1 H25年の桜並木

桜並木は、浦河町西舎地区に位置する優駿ビレッジアエル入口からJRA日高育成牧場の幹線道路沿いに見られますが、並木は明治40年に設置された国営の日高種馬牧場の施設整備において作られました。

種馬牧場は内閣馬政局所管の馬政第一次計画(明治39年から昭和10年)に基づき、奥羽、九州に続き3ヶ所目の種馬牧場として、明治40年に種牡馬の繁殖・改良を目的に設置されました。

設置の翌年から施設整備が進められ、事務所、厩舎、放牧地の周辺に防風林、観賞並木として様々な樹種が植樹され、並木の桜は昭和5年から同10年にかけて植樹され現在の桜並木が形成されました。写真2は昭和5年頃の種馬牧場入口で桜が植樹される直前の様子と思われます。

昭和5年頃 牧場入口

写真2 昭5年頃 日高種馬牧場入口

種馬牧場内の植樹記録は「植樹台帳」、「事業年報」に各年度の樹種、数量、植樹位置が記載されています。

設置翌年の年報に「植樹ハ防風林及ヒ鑑賞並木トシ防風林ニ落葉松ヲ以テシ主トシテ厩舎官舎付近ニ植付ケ観賞木ニハ桜楓ノ二種トシテ道路側及ヒ厩舎官舎ノ付近ニ栽植ス」と記され、現在のJRA日高育成牧場事務所近くに位置する、メモリアルホール付近に1,000本の桜が植樹されました。

その後も牧場整備が進められ場内の放牧地や厩舎、道路側などに落葉松や赤松、楓などの樹種で植樹、補植が行われ、植樹台帳の記載では昭和13年までに19種237千本余りが植えられました。桜は5,800本が種馬牧場入口から事務所(現、メモリアルホール)までの幹線道路沿いを主体に植えられました。 

桜並木を通り沿い奥に進むと、JRA敷地内に推定樹齢100年を経過すると言われる「長寿桜」と「百年桜」が有ります。この2本の位置と樹齢から、最初に桜が植えられた桜と思われます。

近年の浦河桜まつりは、優駿ビレッジアエルを会場に行なわれていますが、以前は長寿桜の付近を会場に行なわれ、隙間なく大勢の来場者が桜を愛でながら賑やかに花見が催されていました。

写真3 百年桜(左)と長寿桜(右)

写真3 百年桜(左)と長寿桜(右)

並木の桜は気象状況や病害虫による影響により、その存続を懸念され、平成23年から樹木医による診断が行われ、並木再生・維持のため治療が開始され、桜以外の楡やトドマツなどを伐採し生育の助長対策を行い、間隔が開いた所へ後継木として桜の苗木を植栽して、桜並木の景観保全、再生に努めています。

浦河町立郷土博物館 伊藤昭和