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江差のシンボル 鴎島【コラムリレー第16回】

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北海道渡島半島の南西部に位置する江差は、江戸時代中頃から交易港として発展した港町である。
江差が交易港として選ばれた理由はいくつかあるだろうが、鴎島が海側より吹く西風から北前船を守る「天然の良港」であったことが最たる理由であろう。
現在、鴎島と江差市街地は埋め立てによって繋がり、鴎島に停泊する北前船の姿もないが、鴎島へは町民はもとより多くの観光客も足を運んでいる。
今回は、歩いて2時間ほどで回ることができる散歩コースにあわせて、江差のシンボルである鴎島をご紹介する。

■瓶子岩(へいしいわ)
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国道228号線から鴎島へ伸びている道を進むと、島のすぐ近くまで行くことができる。車を降りて歩くと、見えてくるのが瓶子岩だ。
瓶子岩は、徳利を逆さまにした様な岩である。
伝説では、神が折居という姥に託した瓶が岩になったものだという。折居は、瓶の中に入っていた水を海中に注ぎ、江差にニシンをもたらした。
毎年7月第1土曜日に、豊漁を願う地元の漁師たちによって瓶子岩の注連縄飾りが替えられる。

■北前船係船の跡
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瓶子岩を右手に見ながら海上の遊歩道を北上すると、岩盤にいくつもの穴を穿った場所がある。
ここは、江戸時代から明治時代にかけて北前船が停船していた場所だ。穴に棒杭を立て、海に停めた船と綱で繋いでいた。

■階段の跡
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遊歩道を歩いて鴎島の北端まで行くと、島の上へ登るための整備された階段がある。
この階段の脇を見てみると、時代は判らないが、岩を削って造った昔の階段を見ることができる。
この階段は、次にみる厳島神社への参道でもあった。

■厳島神社
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北端の階段を上がって鴎島の東側へ向かうと、木立の中に厳島神社がある。北前船の乗組員たちが、公開安全を祈念した神社だ。
厳島神社は慶長20年(1615)の建立とされ(「福山秘府」)、ちょうど今年が400年目の年であった。
厳島神社の鳥居は、加賀国橋立の北前船船頭たちが天保9年(1838)に寄進したものである。

■弁慶の足跡
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厳島神社を出て、景色を堪能しながら島の南側へ向かうと、干潮時にだけ見ることができる弁慶の足跡がある。
江戸時代から語り継がれている伝説では、源義経とともに江差へとやってきた武蔵坊弁慶が遺したとされるものだ。

鴎島は、江戸時代から江差の人々が生業・生活の中で行き来していた場所である。
現在では、町民や観光客が楽しみとして鴎島を訪れている。
今と昔では目的は違うが、このようにたくさんの人々が訪れる鴎島を大切に守っていきたい。

<江差町郷土資料館 宮原浩>