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歴史刻まれたヒノキアスナロの森【コラムリレー第6回】

厚沢部町の土橋自然観察教育林(以下教育林)は、「レク森」の愛称で町民に親しまれています。この森には、道内では渡島・檜山地方の一部にしか生育していないヒノキアスナロという樹の純林があります。ヒノキアスナロの分布は八雲町見市川付近を北限としていますが、まとまって生育している場所は江差町豊部川付近、上ノ国町天の川付近、上磯町茂辺地川、そして厚沢部町安野呂川・厚沢部川付近と、主に檜山地方に集中しています。

現在北海道では、ヒノキアスナロの木材生産はほとんどありません。しかし江戸時代には、ヒノキアスナロ材はニシンなどの海産物と共に松前藩の財政を支える重要な役割を果たしていました。

当時檜山地方の山々は、特に美しいヒノキアスナロ林を有するとして、松前藩によって「御山七山」に選定されていました。しかし過剰な伐採や大火災(1695年)により、檜山地方のヒノキアスナロ林は多大な被害を受け、一時的にヒノキアスナロが枯渇した事もありました。その後、ヒノキアスナロ等の伐採を制限する「留山」の制を実施したり、林業の中心地が檜山から道央に移ったこともあって、現在でも豊かなヒノキアスナロ林が残されているのです。

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教育林のヒノキアスナロ純林

教育林を散策中、ヒノキアスナロ林にさしかかると他の場所に比べてひんやりとしており、空気が変わったように感じます。林内はヒノキアスナロの厚い葉に日光がさえぎられて昼でも薄暗く、林床にはシダ植物のほかにほとんど植生はありません。

 

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右が親木、左に歪曲した枝が細い一本の木として独立している(伏条更新)

ヒノキアスナロは十分な光量がないと伏条更新(地を這った枝が地表についた部分から根をのばし、独立した個体として成長する)をして増えます。人の手が入らなくなって長い時間が経っているので、ユニークな樹形のものが多数みられます。

 

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ヒバ爺さんの前で (H27.8.15 木育イベントにて)

この教育林の中でも最も長齢な樹が、「ヒバ爺さん」(地元の方はヒノキアスナロをヒバと呼んでいます。)と呼ばれるヒノキアスナロの大木です。樹齢はおよそ600~700年と言われています。

この教育林は、国道から徒歩5分程度という好アクセスな場所にあり、上記の「ヒバ爺さん」にも徒歩30分程度でたどり着くことが出来ます。ヒノキアスナロ林を保全するという役割の他に、人びとが貴重な自然を気軽に体感できる場としても、この教育林は重要であると言えると思います。

(厚沢部町土橋自然観察教育林 教育林コーディネーター 水本 絵夢)