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キタキツネの雑種のはく製【コラムリレー第38回】

キタキツネのはく製

当館では変わった毛色をしたキツネのはく製を展示しています。

 

北海道ではキツネは人間とかかわりの深い動物で、住宅街でも見られることがあります。今の季節では、雪上に残されている一直線に並んだ足跡を見る機会は多いのではないかと思います。食性は雑食で、ネズミ類、昆虫、果実などを食べます。寄生虫であるエキノコックスの媒介者でもあります。

 

北海道に生息するキタキツネは北半球に広く分布するアカギツネの亜種です。本州では同じく亜種のホンドギツネが生息しています。キタキツネはホンドギツネと比べて体がやや大きく、耳の裏や四肢の足首が黒くなっています。近年の研究では、キタキツネはホンドギツネよりも大陸のアカギツネに近縁であることがわかってきており、北海道と本州以南で生物相が異なっているというブラキストン線が関わっているものと考えられています。

 

さて、当館では多数のはく製を展示しています。ほとんどのはく製が市民の方から寄贈されたものです。キタキツネについても写真で示したはく製を展示して紹介しています。見ての通り、一般的なキタキツネとは毛色が異なっています。顔や首、背中、尾の一部が灰色がかっています。

 

北海道ではたびたび灰色をした個体、アカギツネの変異個体であるギンギツネが観察されることがあります。ギンギツネの毛皮は人気があり、戦前戦時中は海外から持ち込まれて飼育されていたとのことで、現在目撃される灰色の個体は、飼育施設から逃げ出した個体か野生のキタキツネが変異した個体だといわれています。このはく製はおそらくギンギツネとキタキツネの雑種なのでしょう。

 

秘蔵品ということでキタキツネの雑種を紹介しました。たんに珍しいということだけで終わらず、なぜこのような雑種が生まれたのかというような背景も、来館者に伝えていけたらと思います。

 

<士別市立博物館 学芸員 本部哲矢>