石狩紅葉山49号遺跡。約4000年前に川を利用した人々の様子を知ることのできる道具がこれほど豊富に出土した遺跡は、日本の中でもめずらしいことです。特に、当時の川に設置した魚の捕獲用施設がほぼ完全な形で残っていたことは大変貴重な発見となりました。捕獲用施設の仕組みは、川を横断するように杭を打ち並べ、そこにフェンス状の部品を置くもので、魚の進行を妨げるためのものと考えられます。
出土したフェンス状の部品には、主に2種があります。
一つは、細木を縦に並べ、横方向にブドウ科の蔓で編み連ねた「すだれ状」のもの。細木の直径は2~3㎝で、樹種はヤナギ科ヤナギ属が多く用いられています。この遺跡では、杭の並ぶところに「すだれ状」の部品が設置されたまま出土したものがあります。このような状態での発見は、具体的なしかけの構造を知るうえで貴重なものといえます。
もう一つは、縦木と横木を組んで作った「柵」。幅1㎝程に割り揃えた加工材(主にモクセイ科トネリコ属)、ブドウ科の蔓、蔓の表皮で作っています。「柵」は横に倒れた状態で33枚が出土し、写真はそのうちの1枚です。川に立て並べてサケなどの遡上の進行を妨げるしかけであったと考えられます。これらの「すだれ状」や「柵」の作り方を見ると、縄文の人たちの知恵と工夫が見られ、丹念な手仕事が感じられます。
只今開催している、いしかり砂丘の風資料館10周年記念テーマ展「川と人と漁-遺跡にみる縄文の河川漁」(11月10日まで、火曜休館)では、「柵」や「すだれ状」の部品をはじめ、この遺跡から出土した川漁にかかわるいろいろな道具を展示しています。常設展示では見られない出土品など、幅広い資料を間近で一堂にご覧いただける絶好の機会です。ぜひご来館ください!
<いしかり砂丘の風資料館 学芸員 荒山 千恵>