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エゾオオカミと呼ばれた北海道犬~ラベルとDNA鑑定~【コラムリレー第18回】

エゾオオカミと呼ばれた北海道犬(剥製,中に入っていた頭骨)札幌市博物館活動センター所蔵

すき間に落ちたものを拾い上げるのは面倒、ではないでしょうか。しかし、世の中にはすき間がたくさんあります。博物館では,学芸員や様々な知識と技をもつ人たちの協力をいただきながら、“すき間”を覗き、そこにあるモノを拾い上げ、調査研究する仕事もあります。

今回紹介する資料は、エゾオオカミと呼ばれた剥製です。旧大通小学校(札幌市中央区、現 札幌市立札幌大通高等学校)にあったもので,学校統合に先立つ整理中にあわや捨てられそうになったところを当時の校長先生が拾い上げてくれました。しかし、博物館の資料として残し伝えていくのに最低限必要な情報、いつ、どこで、だれが採集したか、どんな経緯で小学校に寄贈されたのかという記録がありません。情報は台座に貼り付けられていた市の備品整理票の「エゾオオカミ」という文字のみでした。その後、剥製は当センターに寄贈されました。

エゾオオカミは既に絶滅、否、人間が根絶した生物です。事前に剥製を見た専門家は「最終判断にはDNA鑑定が必要」としていました(北海道新聞2003年1月30日朝刊)。もし本当にエゾオオカミなら、札幌の自然と人間の関係を物語る第一級の資料となる!というので、我々職員も正直,沸き立ちました。が、冷静に。残された実物標本を活用して検証していかなくてはなりません。

まず,国内で唯一エゾオオカミの標本を収蔵・展示している北海道大学植物園・博物館からDNA鑑定をお願いする研究者として石黒直隆氏(当時 帯広畜産大学,現 岐阜大学)を紹介して頂きました。ひしゃげて不自然な体勢になっていた剥製を修復する過程で中に残されていた骨が見つかり,その一部を石黒氏にサンプルとして送りました。数ヵ月後,届いたミトコンドリアDNA(母親から遺伝)の分析結果の解釈では,北海道犬の可能性が高いとされました(朝日新聞2004年6月12日夕刊)。

つい先日も,本州からこの標本を調査しに来た方がいました。標本が“お蔵入り”にならず,少しずつ正体が明らかにされ,見解が深まっていくのは,様々な専門家に標本を活用していただいた結果です。

 

<札幌市博物館活動センター 学芸員(植物)山崎真実>