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極秘で輸送を務め「幻の列車」といわれた車両の部品類【コラムリレー第16回】

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これらの資料は、「マニ車」と呼ばれる鉄道車両が2004(平成16)年に解体された時に収集した物です。「マニ車」の正式名は「マニ30形式荷物客車」、全国で6両のみ存在し日本銀行が所有した現金輸送専用車両です。ちなみに「マニ」の意味は日本国有鉄道が定めた客車の形式称号で、「マ」は客車の重量(42.5t以上47.5t未満)を示し、「ニ」は車両の用途(荷物車)を意味しています。

 

この資料の他に、「座席シート」や「車掌室・荷物室の扉」といった大型物など写真に収められなかった物も含め、32種類66点の部品・備品類を保存しています。写真右上と中央上にある「監視カメラ」「モニター」は、輸送するお札を保管する2つの荷物室と車掌室に取り付けられ日銀担当者と警察官が車内で監視をしたもので、厳重な監視体制を物語っています。監視カメラの下にある「非常用メガホン」「発煙筒ボックス」左上の「ヘルメット」などは万一に備えていたことがわかります。左側横の「日銀マーク入りの傘」などは入手困難なものでしょう。

 

2013年から2014年の統計では約90.1兆円の日本銀行券(お札)が全国に流通しています。日銀は全国の支店に新しいお札を現送(現金送金)したり古く傷んだお札を回収しますが、その輸送を鉄道が担っていた時代がありました。1949(昭和24)年の専用車の使用開始から2003(平成15)年度の廃止となるまで「マニ車」は貨物・旅客列車に連結され運用されました。運行時間や行き先など一切秘密にされ、偶然「マニ車」を見つけ撮影しようとしても警備が厳しく、近づけば職務質問を受けるなど厳重な管理体制のため全く詳細がわからない「幻の車両」でした。

 

しかし「マニ車」の用途廃止が決まったことで日銀ではその存在を伝え鉄道輸送史を語る貴重な歴史資料として保存先を探しました。
その結果、日本銀行旧小樽支店金融資料館のある小樽で受け入れを決定、6両あった「マニ車」のうち「2012号」1両を保存し、残りの5両(2007号から2011号)は解体されることになりました。保存車両に万一破損などがあった場合の予備部品として、今回の資料を残してもらいました。

 

当館の夏期営業中は実車の「マニ30形2012号」の内部を含め見学することができます。もし見学の機会があれば、紹介した部品がどこにあるか探してみるのも面白いかもしれません。

 

(小樽市総合博物館 学芸員 佐藤卓司)