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地域の「遺産」を見つける、伝える、残す

コラムリレー08「博物館〜資料のウラ側」第12回

 北広島市エコミュージアムセンター知新の駅(ちしんのえき)は、北広島市の豊かな自然、歴史等についての情報の収集や発信、展示といった役割を担う、「屋根のない博物館(エコミュージアム)」の中心施設です。そのため、私たちエコミュージアムセンターの学芸員の扱う「資料」は館内での展示物にとどまらず、市内に点在する史跡や石碑、自然環境、まちの記憶なども含んでおり、それらを地域の「遺産」として捉えて現地で保存・活用することを基本としています。そして、それぞれの遺産がもつ特性などに着目して、関連する遺産をグループ化したものを「サテライト」と呼び、各遺産の場所には紹介の看板を設置しています。

東部地区サテライトの平和の灯公園
旧島松駅逓所周辺サテライトの三別川(さんべつがわ)

 令和7年5月現在、北広島市においては2つのサテライトの設置が完了しています。明治17年に広島県から移住した人々によって、現在のまちの基礎が築かれた軌跡を見ることができる「東部地区サテライト」、明治期に、交通不便の地に駅舎と人馬を備え、宿泊や人馬の継立、運送などの便をはかるために設置され、現在も建物が現存している旧島松駅逓所(きゅうしままつえきていしょ)を中心とした「旧島松駅逓所周辺サテライト」です。そして現在、3つめのサテライトとなる「西の里(にしのさと)サテライト」の設置準備を進めています。この時、大きな力になっていただいているのが、「まちを好きになる市民大学OB会(以下OB会と記述)」の皆様です。

 エコミュージアムの特色の一つに、「みんなが力を合わせてつくる」という点があります。地域に住む市民と協力しながら地域の遺産を発掘し、保存、活用へと繋いでいくことが重要となります。当センターで実施している市民向けの講座、「まちを好きになる市民大学」の卒業生から構成されるOB会の方々には、日頃から館内のボランティアガイドや、サテライト内の遺産を巡るツアーである「発見の小径(こみち)を歩く」というイベント等のガイドなど、地域の魅力発信にご協力をいただいています。

 今回、サテライトをつくるにあたり、まずは西の里地区にはどんな遺産があるのかを洗い出しました。水道の発祥の地や、遺跡の発見場所、道内に6つしかない特別天然記念物である野幌原始林(のっぽろげんしりん)もあれば、林の中にひっそりと佇む小さなお地蔵さんも…OB会には、見学ツアーの際に解説ポイントとなる場所も同時にピックアップしてもらいます。そして実際に見学ツアーの行程を歩いてみて、適切なルートかどうかを確認します。先日、西の里サテライトの候補地となる場所の下見を行いました。史跡の魅力、その場所を解説する際の内容はもちろん、まち歩きツアーとして実施するときに、歩くルートは安全か、休憩スポットはあるのかといったことも注意すべきポイントです。まだまだ改善点や考えるべき項目が出てくる結果でしたが、ぼんやりしていた「小径」の姿が少しだけ見えてきたような気がしました。

あいにくの雨の中、西の里サテライト候補地の一つ、西の里神社を下見

 今後の予定としては、9月には本番のイベントとして一般参加者も交えたツアーイベントを実施し、アンケートを取り、自分たちの住む地域の遺産発見ツアーとしての感想、他に取り上げてほしい遺産はあるかなどを調査し、より多くの市民の意見を取り入れながら肉付けし、数年をかけて形作っていくことになろうかと考えています。市民の方たちと協力しながら地域の魅力を再発見していく作業に、私自身もワクワクしています。

 北広島市の新たなサテライトにはどのような遺産が選ばれ、そしてその遺産を巡るどんな道ができるのか、乞うご期待です!

(北広島市エコミュージアムセンター知新の駅 学芸員 小杉宇海)